オートバックス非正規差別是正裁判  ――原告はなぜ裁判に踏み切ったのか?

 オートバックスとフランチャイズ契約の下、都内で5つのオートバックス店舗を運営している株式会社ファナス(以下ファナス)を、労働契約法20条違反――非正規労働者に対する不合理な差別――で訴えた裁判の第1回期日が、本日4月25日にありました。田島さんから非常に力のこもった陳述がありましたので、以下抜粋します。



 私は被告である株式会社ファナスによる様々な理不尽な扱いにより体調不良となり休職しました。休職中も改善を求め、数回の交渉を重ねました。 体調が回復し、復職を求めると会社都合で解雇されました。(中略)今はじっと座っていられないので床屋にもいけません。 薬を飲んでいないとオレンジ色の看板を見るだけで発作が起きる状態になってしまいました。私には妻と今年小学校に入学した娘がいます。 家族のことも考え、一時期は全て諦めようと思いました。妻と娘から、 「パパは何も悪くない。諦めたら後悔する。後悔したままの人生でいいのか?」 と言われました。 ここで泣き寝入りをしてしまうと未来を支える子供にも悪影響を与えてしまうと思いました。
 (中略)ひとりひとりが人間として大切な存在である労働者が、 正規・非正規で差別されることのない日々が訪れることを心から願っています。

 ファナスの従業員の約半分が非正規労働者です。このように非正規労働者に大きく依存しているにもかかわらず、ファナスは非正規労働者に差別的な処遇を強いています。

 この記事では、裁判の論点を簡単に要約した上で、そもそもなぜ今回提訴に至ったのか、提訴に至る経緯を紹介します。



1.オートバックス非正規差別是正訴訟の論点


 今回の裁判では、非正規労働者に対する不合理な差別を禁じた労働契約法20条に依拠しながら、株式会社ファナスの違法な労務管理を問題にしています。具体的には、主に以下の点を問題にしています。



(1) 13年勤めていたにもかかわらず、「非正規だから」休職を認めず解雇


 田島さんは度重なるパワーハラスメント等を受けており精神疾患にかかり2018年5月から休職を余儀なくされました。正社員には、3年以上勤続していれば約2年間の休職期間が就業規則で認められています。つまり、その期間は病気で休んでも解雇されないということです。しかし、株式会社ファナスは、この休職規定は非正規労働者には適用されないとして、田島さんの2018年5月からの精神疾患による休職を「欠勤」と評価し、2018年11月末で田島さんを解雇しました。

 田島さんは13年、株式会社ファナスの下で働き続けていました。なぜ非正規であるというだけで休職規定が適用されないのでしょうか?これは明らかに不合理な差別です。裁判では、休職規定についての非正規差別を問題にし、解雇の撤回を求めています。



(2) 売り上げに貢献しても「非正規だから」ボーナス・手当は支給されず


 株式会社ファナスでは、店舗全体の売り上げが月間の目標に達すると月に1~2万円の「達成手当」が支給されます。また、全社的な売り上げが年間目標に達すると1ヶ月~1.5ヶ月分のボーナスが支給されます。この達成手当とボーナスが支給されるのは正社員だけです。しかし、達成手当とボーナスの支給の有無が決定される売り上げには、非正規労働者が上げた売り上げも含まれます。なぜ正社員の売り上げへの貢献には手当やボーナスが支払われ、非正規労働者の貢献は何ら評価されないのでしょうか?

 「非正規労働者はどうせ大した貢献をしていないのだろう」と思われるかもしれません。しかし田島さんは、個人売り上げの成績が非常に優秀であり、正社員も含めた売り上げ成績のランキングで1位を獲得し表彰されることもしばしばでした。株式会社ファナスの業績は、非正規労働者の多大な貢献によって支えられているのです。

 そうした貢献に非正規労働者であるということだけを理由に報いないのは極めて不当であり明白な差別です。非正規労働者への達成手当やボーナスの支給を求めます。



(3) 日常的なパラーハラスメントによる精神疾患


 株式会社ファナスでは、田島さんに対して、不当な退職勧奨を行う、「クズ」などといった暴言を吐く、田島さんだけ朝礼に出させずロッカーも与えない、などといったパワーハラスメントが横行していました。この結果田島さんは「不安障害」と診断され、2018年5月より休職を余儀なくされています。株式会社ファナスは、こうしたパワーハラスメントに対して適切な是正措置を取らないばかりか、田島さんを解雇するなどパワーハラスメントにむしろ加担しています。

 今回の裁判では、このパワーハラスメントによって負った精神的損害への損害賠償や慰謝料の請求をしています。




2.裁判に至るまで


 これまで、今回の裁判の論点を見てきましたが、ではそもそも、なぜ今回裁判に至ったのでしょうか?ことの発端は2013年にさかのぼります。



(1) ファナスからの嫌がらせの始まり


 当時田島さんは、生活に困窮した同僚のNさんから相談を受けました。田島さんは店長にNさんについて相談したところ、「店長という立場のためえこひいきは出来ない」「協力できる人間で協力してやってほしい」「何かあれば最終的に自分が責任を取るので」などといわれたため、他の同僚と協力し計205万円をNさんに貸し付けました。しかし、Nさんは返済することなく退職してしまったのです。

 田島さんらは、店長が「何かあれば最終的に自分が責任を取るので」「協力してやってほしい」と言われたために貸し付けをしたという経緯があるため、店長や株式会社ファナスに返済されなかった分について何らかの補填をしてほしいと求めますが、何ら対応は取られないどころか、2014年5年2月28日以降、度重なる退職勧奨が始まり、2015年4月には一方的に雇止め通告がなされました。株式会社ファナスとしては、厄介者払いをしたかったのでしょう。田島さんは、雇止め通告の直後に東京都労働センターに相談し、介入してもらい、雇止めを撤回させました。

 しかし、株式会社ファナスの田島さんへの攻撃はこれで終わりではありません。その直後からパワーハラスメントが始まるのです。店長が朝礼で田島さんの名前だけ呼ばない、これまで20時までの勤務であったはずが19時までで帰らされる、田島さんの朝礼への参加を禁ずる、他の従業員には割り当てられるロッカーを田島さんにだけ与えない、といった嫌がらせが続きます。またその後も正社員から「クズ」と罵倒されるなど、正社員によるパワーハラスメントも日常的にありました。

 こうした日常的なパワーハラスメントの結果、田島さんは精神疾患にかかり、2018年5月に休職を余儀なくされるのです。



(2)正社員には適用される休職規定を「非正規だから」と適用せず解雇


 田島さんは、達成手当やボーナスの支給や自身の時給の引き上げを繰り返し求めていましたが、この点についても株式会社ファナスは何ら対応を取らず、また休職を余儀なくされて自身の雇用が不安定になることから、青年ユニオンで団体交渉を申し入れます。

2018年6月に団体交渉を申し入れ、提訴までに全部で3回の団体交渉を行ってきました。まずは田島さんの雇用の確保が先決だったため、団体交渉では主に田島さんの雇用の確保が主な論点であり、具体的には、「非正規労働者である田島さんに正社員には認められている休職を認めるかどうか」が大きな争点でした。

 ファナスは、頑なに、課されている責任が正社員と非正規労働者では大きく異なるため、非正規には休職規定を適用しないと主張します。しかし、非正規労働者も正社員も行っている業務は同一であり、しかも田島さんに関して言えば売り上げの成績は正社員の中でも優秀です。正社員以上に会社に貢献しているのです。

 ファナスは、そして、2018年5月以降の休職を「欠勤」であると評価して、2018年11月末で解雇することを通知してきました。その後も青年ユニオンは、団体交渉を重ね繰り返し田島さんの復職を求めますが、ファナスは頑なにこれを認めませんでした。

2018年11月23日には、ファナスの態度が一向に変わらないため、会社前宣伝をしてファナスの不当性を訴えました。そこでは、田島さんのパートナーであるEさんとお子さんもスピーチをして訴えました。以下Eさんのスピーチです。

  主人は不眠症になり常に疲労状態、食欲もなくなりみるみる痩せて、体重は10キロほど落ちてしまいました。それでも家族に心配はかけまいと、重たい身体をなんとか起こして毎朝出勤していきました。(中略)このままではある日突然、自殺してしまうのではないかと心配でした。(中略)誰にでも大切な家族がいるでしょう?心配してくれる友人がいるでしょう?非正規差別なんてやめてください。非正規労働者にも、きちんとした労働環境を用意してください。

 ファナスはこうした訴えに全く耳を貸さず、その後の団体交渉でも解雇を撤回しませんでした。会社ぐるみのパワハラで休職に追い込んでおきながら、非正規労働者には休職規定が適用されないからと解雇する。どこまで非道な会社なのでしょうか。



3.全ての非正規労働者のための闘い


 非正規労働者が4割に達しようというほど増え、社会は非正規労働者に支えられています。しかし、「非正規労働者は責任が軽いから」「非正規労働者はすぐ辞めるから」「非正規労働者は小遣い稼ぎだから」などといった非正規労働者差別はまだまだ根強いものがあります。田島さんは2019年3月19日の提訴に際しての記者会見でこう言います。


 正規と非正規の差別がひどいのを直してほしい。努力したことについては正当に評価してほしい。当たり前のことを当たり前にしてほしい。ただそれを望んだだけでした。(中略)私の闘う姿を、同じように理不尽に苦しんでいる方が見て、一人でも多くの方が立ち上がってくれるきっかけになってくれたらと思います。

 この間、非正規労働者への差別の是正を求める裁判が多数取り組まれています。このオートバックス裁判も、こうした労働契約法20条裁判の一連の動きに連なるものです。非正規労働者差別の是正に向けて、全力で取り組みますので、ご支援どうぞよろしくお願いいたします。


以下、本裁判に関する報道のURLを添付いたします。

弁護士ドットコム https://www.bengo4.com/c_5/n_9391/

共同通信 https://this.kiji.is/480662237550249057

レイバーネット http://www.labornetjp.org/news/2019/0319shasin

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