新型コロナウイルス禍における労働相談から見えるもの

 首都圏青年ユニオンは、新型コロナウイルス禍で多くの労働相談を受けてきました。この度、2020年4月から12月に寄せられた440件の労働相談の集計作業が完了しましたので、その概要を報告したいと思います。

 なお、新型コロナ禍では、他団体と共同での労働相談ホットラインを何回も行いましたが、そこで寄せられた相談についてはこの集計には含まれていません。それらを加えると、440件の倍以上の件数になると思われます。


◆どんな人から相談が寄せられたのか?

 まず、相談者の属性を見てみましょう。性別構成をみると、184人が男性、210人が女性、46人が不明でした。首都圏青年ユニオンのこれまでの組合員においては男性の割合のほうが高いため、女性からの相談のほうが多かったというのは新型コロナ禍における労働問題の特徴を現わしていると思われます。 (図表1)

図表1


 また雇用形態を見ると、事業主(30件)、失業者(2件)、不明(13件)を除いた労働者のうち、正社員からの相談は17%(67件)で、パート・アルバイトからの相談が70.1%(277件)でした。派遣やそのほかの非正規労働者も加えると、83%(328件)が非正規労働者からの相談でした。 (図表2)

図表2


 性別と雇用形態をリンクさせると、男性相談者の21%が正社員であり、パート・アルバイトは57%でした。一方で女性のうち正社員は11%に過ぎず、68%がパート・アルバイトでした。正社員の割合は男性のほうが約10ポイント高く、パート・アルバイトの割合は女性のほうが約10ポイント高くなっています。その結果、相談者のうち最も多い類型は、女性のパート・アルバイトであり、これが相談者全体の32%を占めました。次の多いのが男性のパート・アルバイトで、相談者の24%を占めました。 (図表3)

図表3


 年齢層を見ると、20代が33.7%、30代が21.5%、40代が22.0%、50代が13.3%と、20~50代の労働者からの相談が中心でした。 (図表4)

図表4


 相談者の働いている産業を見ると、「宿泊業、飲食サービス業」で働いている人からの相談が256件あり、割合にして相談全体の58.2%を占めます。256件の相談のうち228件が飲食店労働者からの相談でした。 (図表5)

図表5



◆どんな相談が寄せられたのか?

 次に相談内容を見てみましょう。

 最も多い相談が、「事業主都合休業」についてのもので、相談者の65.0%の方が相談していました。これは、「シフトや労働時間が減ってしまったけれども、休業手当が支払われない・休業手当が不十分である」という相談です。一方で、「解雇・雇止め・退職勧奨」に関する相談は、18.6%でした。また「感染対策」についての相談は7.0%でした。 (図表6)

図表6


 さて、次に相談内容を雇用形態別にみてみましょう。正社員のうち「事業主都合休業」についての相談をした人は、正社員の相談者のうち35.8%にとどまりました。他方、非正規労働者のうち「事業主都合休業」の相談をしたのは79.8%です。「解雇・雇止め・退職勧奨」についての相談については、正社員の37.3%が相談しているのに対して、パート・アルバイトのうちその相談をしているのは10.8%にとどまります。(図表7)

図表7


 また、「事業主都合休業」の相談の内容をより詳細に見てみると、「休業手当が全く支払われていない」という相談をしているパート・アルバイトは88.2%に上るのですが、正社員の場合は58.3%です。対して「休業手当が支払われているが金額が少なすぎる」という相談をしているパート・アルバイトは8.6%なのに対して、正社員の場合には29.2%となります。(図表8)

図表8



 正社員とパート・アルバイトで相談内容が大きく異なるということがわかりますが、ここから双方におけるコスト調整のパターンの違いが読み取れると思います。新型コロナ禍では、そもそも非正規労働者がコスト削減の調整弁として真っ先に切り捨てられましたが、コストカットの方法としては「補償なし休業」という形式がとられました。対して、正社員をコストカットの対象とする場合には、「補償なし休業」という形式ではなく、解雇・退職という形式をとります。正社員の場合には休業させれば補償をしなければならず、休業が解雇・退職の代替とならないためです。


 こうしたコスト調整パターンの違いを生んでいるのがシフト制という働かせ方です。シフト制は、シフトが出ていない期間についての休業補償義務をあいまいにし、補償なし休業を可能にしているのです。企業にとっては、非正規労働者の雇止めへの法的規制が強化されているなか、補償なし休業でコストカットができるのであれば、そちらのほうがはるかにやりやすいでしょう。


 従来から「非正規雇用は不安定な働き方だ」と言われていましたが、そこで念頭に置かれているのは、「有期契約」であり、「雇止めによる雇用契約打ち切りのリスクの大きさ」でした。そうした問題認識のもと、非正規労働者の雇止めについては不十分ながらも法的規制がかけられるようになってきました。しかし新型コロナ禍は、契約期間内における補償なしでのシフト・労働時間削減リスクの大きさとしての不安定性を新たに顕在化させました。これは「非正規雇用の不安定性」の新たな側面でしょう。


 このような新たな不安定性を生み出すシフト制に対して、それを問題視する動きが新型コロナ禍では発生しました。ユニオンによる運動やそれに応じた政府による雇用調整助成金の拡充や休業支援金の創設などです。シフト制そのものを問題視する動きも広がっています。新型コロナ禍は、シフト制の問題が大規模に顕在化し、労働者の困難を引き起こしている一方で、それを変えていく契機をも内包しているといえるでしょう。この契機をつかむのが、今後のユニオン運動の大きな課題の一つでしょう。


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