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​シフト制労働Q&A

 1か月ごとなどに作成される「シフト表」によって、労働時間や労働日を使用者の都合で一方的に変えられてしまうシフト制労働者からの相談が相次いでいます。そこで、シフト制労働弁護団では、これまで寄せられてきた相談の中から、シフト制労働者がよく直面する問題についてQ&Aを作成しました。ぜひ参考にしてください。

 また1人で問題を解決することが困難な場合や、Q&Aだけではよくわからないことがある場合、ぜひシフト制労働弁護団や首都圏青年ユニオンにご相談ください。メール、電話、相談フォームにて無料・秘密厳守で相談対応しております。

Q1.営業時間の短縮や利用客の減少で、シフトの日数や1日当たりの労働時間が大幅に減少してしまっています。生活が苦しいです。減少したシフト・労働時間分の補償をもらうことはできないでしょうか?

A.会社側の責任で労働者を休業させた場合には、減少したシフト・労働時間分の60%以上の休業補償を請求することができます(労働基準法26条・民法536条2項)。コロナを理由に休業となった場合でも諦める必要はありません。会社と約束しているシフトの日数や過去の就労実績などに基づき、減少したシフト・労働時間を計算して、休業補償を求めましょう。また、休業支援金制度を利用して、国から給付金を受け取ることもできます。

 

Q2.コロナの影響で労働時間が減少したため休業支援金を使おうとしたのですが、「シフト制労働者の場合には休業支援金は使えない」と事業主に言われ、申請協力を拒否されてしまいました。このような場合、休業支援金は使えないのでしょうか。

A. 厚生労働省は、シフト労働者も休業支援金を利用できると明言しています(厚労省HP「新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金」)。また、事業主が休業支援金の申請に協力しない場合でも、労働者だけで申請をすることができます。雇用契約書や給与明細等の書類を提出する必要があるので、お困りの際はぜひ首都圏青年ユニオンにご相談ください。

 

Q3.シフトが決まっていたのにいきなり明日から来なくていいと言われました。どうしたらいいでしょうか?

A3.まず「明日から来なくていい」の意味を確認する必要があります。①決まっていたシフトを取り消すという意味か、または②おおもとの雇用契約を解約(解雇)するという意味が考えられます。

 ①の場合:シフトが決まっていた(労働日が確定していた)のに、会社の一方的な都合で取り消されたことになりますので、会社の責任で労務提供ができなかったということになり、シフトが決まっていた日に働いていれば得られたはずの賃金を請求することができます(民法536条2項)。

 ②の場合:客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない解雇は無効です(労働契約法16条)。そのため、解雇の撤回(地位の確認)と、解雇されなければ本来得られたはずの賃金を請求することができます。

 ①②のいずれの場合も、あなた自身が個人で会社に要求することができますが、会社があなたの主張を認めない可能性もあります。労働組合に相談し、一緒に要求することをおすすめします。

Q4.シフト制でパート労働者として働いていますが、子どもが通う保育園・小学校がコロナの影響で休園・休校になってしまい、家にいる子どもを世話するために仕事を休みました。会社に「小学校休業等対応助成金」を使ってほしいと頼みましたが、「自分の都合で休んでいる人に給与を支払うことはできない」と使ってもらえませんでした。休んだ期間の給与はもらえないのでしょうか。

A4.首都圏青年ユニオンは、組合員が勤務している会社が「小学校休業等対応助成金」の申請のための手続きをしない場合に、会社に対して団体交渉等を通じて協力を求めます。その結果、助成金の支給が実現した例がいくつもあります。

また、各地の労働局に『小学校休業等対応助成金に関する特別相談窓口』が設けられました。会社が申請してくれないことを相談すると、労働局から会社に助成金の申請をはたらきかけてくれます。それでも会社が必要な措置をとらない場合には、あなた自身が労働局に申請することができます。この個人申請にも会社の協力が必要なのですが、やはり協力してくれない場合は、労働局に相談すれば働きかけてくれます。

詳しくはこちら→https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_21202.html(厚労省の特設ページ)

Q5.アルバイトとして働いています。仕事について店長に意見したら、シフトを減らされてしまいました。どうしたらいいでしょうか。

A.シフトを減らされることは、大きく二つの場合に分けられます。一つは、すでに一定の期間(1か月や1週間)で確定していたシフトが減らされる場合です。この場合は、すでに確定していた労働日が会社の一方的な都合で減少させられたことになりますので、法的には「休業」に当たります。そのため、まずは、Q1の場合と同じように60%以上の休業補償が受けられます。また、店長の嫌がらせによるシフト減少と言えるときは、それ自体パワーハラスメントですので、損害賠償請求が成立する可能性もあります。二つ目の場合は、未確定の期間のシフトがこれまでの実績よりも減らされる場合です。この場合は、労働契約書の内容や過去の就労実績などから所定労働日数を確定できれば、一つ目の場合と同じように休業補償を請求できます。

 

Q6.シフト制でアルバイトとして働いていますが、「アルバイトには有給休暇はない」と言われました。有給休暇を取得することはできないのでしょうか?

A6. そんなことはありません。たとえシフト制で働いていたとしても、法律で定める条件を満たせば年次有給休暇は取得できます。雇入れの日から起算して6か月間継続勤務し、全労働日の8割以上出勤したときは、労働基準法所定の日数の年次有給休暇を取得できます(労働基準法39条1項、2項)。こうした条件を満たしているのに会社が年次有給休暇を与えない場合は違法になりますので、労基署に相談してみても良いでしょう。遠慮なく年次有給休暇を取得しましょう。

 

Q7.従来週30時間以上働いて社会保険にも加入していたのですが、新型コロナ禍でシフトが20時間未満に減らされてしまい、社会保険から脱退するように言われています。脱退しなくてはいけないのでしょうか。

A7.社会保険に加入させる義務が発生する労働時間の基準は、500人以上の企業であれば週20時間、500人未満の企業の場合週30時間ですが、これらはいずれも、実際の労働時間ではなく、労使で働くことが合意された労働時間(所定労働時間)です。一時的に労働時間を減らしただけで、社会保険から脱退させるのは不当ですし、また長期的に労働時間を減らした場合でも、所定労働時間がどの程度なのかについては、契約書の記載や過去の就業実態などによって判断されます。実際の労働時間が20時間未満だったとしても、契約書や就業実態から、所定労働時間は週30時間以上であると判断されれば、社会保険に加入させる義務が企業には発生するでしょう。

 

Q8.従来週40時間働いていたのがコロナ禍で大幅に労働時間・シフトが減少してしまいました。退職して失業手当をもらいながら転職活動をしようと思うのですが、このような場合でも失業手当はもらえるのでしょうか。

A8.失業手当は、離職の状況が、①自己都合離職なのか、②特別な自己都合離職なのか、③会社都合離職なのかによって、支給開始時期・支給期間等が変わります。①の場合には、1か月間の待期期間が課されますので、すぐに失業手当を受給することはできません。①よりも②の方が、②よりも③の方が、失業手当の支払い金額が高くなり、また支給期間も長くなります。

 さて、そこで、コロナ禍の大幅な労働時間・日数削減による自主的な退職が①~③のどこに該当するのかという点です。厚生労働省は、シフト削減による退職に際しての失業手当受給要件について、以下のような場合には②もしくは③に該当すると判断されるとしています。

・具体的な就労日数が労働条件として明示されている一方で、シフトを減らされた場合。

・契約更新時に従前の労働条件からシフトを減らした労働条件を提示されたため、更新を希望せずに離職した場合。

・新型コロナウイルス感染症の影響により、シフトが減少し、おおむね1か月以上の期間、労働時間が20時間を下回った、または下回ることが明らかになったことにより離職した場合。

 また、賃金が85%未満に低下することになったことを理由とした退職についても、賃金の低下を予見できなかった場合に限って③として判断することになっています。

 いずれにしても、大幅なシフト削減による退職でも、待機期間なしに失業手当を受給できる可能性があります。ただし会社によっては、離職票に①と判断されるような記載をしたりするところも多いため、離職票の記載を確認し書き直してもらったり、またハローワークの窓口でも離職の経過をきちんと説明し、②もしくは③に当てはまることを主張することをお勧めします。

 

Q9.1週間ごとにシフトが確定するのですが、毎回直前にシフトが確定するので困っています。なんとかならないでしょうか。

A9.シフトは、労働日・労働時間という重要な労働条件の内容ですから、会社と労働者とがよく話し合い、双方の合意によって定める必要があります。シフトが直前に確定するのでは、労働者が生活設計を立てることが困難になりますから、望ましい状態とはいえません。会社と話し合い、シフトを確定する期限(例えば、遅くとも1週間前など)を定めましょう。厚労省も、「確定したシフト表などを労働者に通知する期限や方法」をあらかじめ定めておくべきとしています(いわゆる「シフト制」により就業する労働者の適切な雇用管理を行うための留意事項)。

Q10.労働契約の時には何も言われてなかったのに、クリスマスなどの繁忙期だからということで、希望していなかった日にシフトを勝手に入れられてしまいました。これは断ってはいけないのでしょうか。

A10.Q9で説明したとおり、シフトは、会社と労働者双方の合意によって定める必要があり、合意によって初めて確定します。このケースでは、会社によって労働者の意思に反しシフトを入れられていますから、双方の合意がなされたとはいえません。したがって、労働者に働く義務は発生していませんから、その日の勤務は断ることができます。シフトが送られてきた段階で、会社に対し、勤務を断る旨連絡しましょう。これを理由として、シフトカットなど不利益な取扱いをすることは許されません。そのような場合には、ユニオンや弁護団までご相談ください。

Q1.シフトカットと休業補償
Q2.休業支援金
Q3.シフト確定後のシフトカット
Q4.小学校休業等対応助成金
Q5.シフトカットによるハラスメント
Q6.有給休暇
Q10.シフト強要
Q7.シフトカットによる社会保険脱退
Q8.シフトカットによる退職と失業手当
Q9.シフト確定の時期
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