―苦境に置かれた「マネキン」販売員―
今回は、一見休業支援金が難しそうですが、申請者がユニオンに加入して企業と交渉したことで支給された事例を紹介します。
新型コロナ禍の影響による商業施設の閉鎖に伴い、施設内で働く販売員の多くが職を失いました。特に、百貨店の呉服店やデパ地下の食品販売店などの販売員のうちには、「マネキン(さん)」と呼ばれる方々が存在します。その雇用責任の曖昧さから、ほとんどの人が休業手当や休業支援金を受けとれていません。「マネキン」とは、「マネキン紹介事業所」(※)に登録して仕事の紹介を受ける労働者に対する呼び名です。一般的に、高齢の女性が多く登録しています。
※…厚労省から有料職業紹介事業の認可を受けた企業が運営している有料職業紹介事業所
―申請に協力してもらえず…―
雇用契約は就業先の企業と結ぶところが派遣との違いです。メーカーとの契約書がない、就業先企業に「マネキンさんだから」と自分たちが雇っているという認識がない会社が多いなど、雇用責任が曖昧にされている場合が多くあります。
休業支援金を利用したいとユニオンに加入した79歳のAさんは、池袋のマネキン事業所に登録し、百貨店にある呉服店で日雇いの販売員として働いていた方でした。年金だけでは生活していくことができず、多いときには月10万円ほどマネキンの仕事で収入を得てきました。しかし、コロナ禍で仕事の紹介が一切来なくなり、登録していたマネキン事業所も閉鎖してしまいました。新しい仕事もなかなか決まらず、それでも生活費を捻出しようと、休業支援金の申請を考えました。
仲間内でも休業支援金を申請したいという方が多かったそうですが、みなさんことごとく就業先企業から協力を拒否されてしまっていました。拒否の理由は「マネキンさんだから」「日雇いだから」というものばかり。マネキンとはいえ一般的な日雇い雇用と変わりませんし、休業支援金は日雇いでも使えます。Aさんはご家族の紹介で首都圏青年ユニオンにつながり、企業に申請協力を求めました。
―交渉の末、50万円の支給!―
ユニオンが企業と交渉したところ、会社は協力すると回答しました。しかし、協力は部分的なものです。事業主が、労働者(申請者)が支援金を申請した期間に、当該労働者を雇用していたこと、またその期間に休業を命じたことを証明する必要があるのですが、日雇いではありますが雇用していたことは認めつつ、休業は「命じていない」としました。
一見、休業を「命じていない」と記載されては不利なように思いますが、厚労省が10月30日の通達によれば、客観的な収入減少が証明できれば支給対象となるのです。こうした部分的な協力であっても、支給決定がなされました。2020年4月から12月までの期間で、計約50万円が支給されています。
ユニオンに加入して企業と交渉すれば、申請協力を求める大きな力になるうえ、ややこしい事情を説明する文書の作成援助も可能です。
マネキンに登録して日雇いで働いていた場合など、支給されるかどうか微妙なケースでも企業との交渉や労働局への詳細な説明次第では支給される可能性があります。是非、相談をお寄せください。
●首都圏青年ユニオンの労働相談ホットライン
日時:毎週火曜日・金曜日 17:00~21:00
電話番号:03-5395-5359
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