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TCL社パワハラ・休職期間満了雇用打切り事件の東京地裁判決を歓迎するとともにTCL社に対し控訴断念と速やかな謝罪及び全体解決を求める声明

TCL社パワハラ・休職期間満了雇用打切り事件の東京地裁判決を歓迎するとともにTCL社に対し控訴断念と速やかな謝罪及び全体解決を求める声明


2023年12月17日


東京公務公共一般労働組合青年一般支部(首都圏青年ユニオン)

同ユニオン顧問弁護団


1,2023年12月7日、東京地裁民事第19部(小原一人裁判長ほか)は、TCL社パワハラ・休職期間満了雇用打切り事件(以下、「本件」という。)において、判決言い渡しを行い、原告のTCL社における雇用契約上の地位を確認し、それに伴うバックペイの支払い、さらには原告が受けたハラスメントに関する損害の賠償として慰謝料の支払いを行うようTCL社に命じた(以下、「本判決」という。)。


2,本件は、中国の家電メーカーであるTCL社で雇用されていた原告が、2019年1月頃から直属上司とトラブルとなりハラスメントを継続的に受け、また、会社代表者らから退職勧奨を受け、同年3月25日に適応障害を発病した。その後、同年6月17日に寛解したとして短時間勤務での復職を申し出るも、短時間勤務できるポジションはないとのことで休職期間満了を理由に自然退職させられたことについて、原告が、TCL社に対し、原告の病気は2019年6月に寛解しており休職事由が消滅している、仮に消滅していなくとも業務起因性のある発病であるため労基法19条1項に反する、として雇用契約上の地位確認を求め、同時に上記ハラスメントは違法行為であって原告に対して慰謝料等の支払いを行うよう求めて提訴した事件である。


3,本判決は、概要以下の内容であった。

・ハラスメントとして原告が主張したうち、以下の5点につき違法なハラスメントであると認めた。

①上司による勤務時間中の読書注意・警告

②転送メールに関する注意指導(メールボックス汚すな発言)

③遅延証明書に上司が押印しなかったこと

④業務連絡に関する上司の反省文の提出指示

⑤代表らによる退職勧奨並びに訓戒処分

・以上のハラスメントは精神疾患による労災認定基準で言うところの精神的負荷のレベルとして「中」程度であるが、原告と上司が繰り返し衝突していたことが周囲からも明らかであり、その後に原告の言い分を聞くことなく退職勧奨を原告にするなど会社も不適切な対応をしてきたことからすれば、一連の出来事を加味して「強」であり、適応障害発病は業務起因性がある。

・よって労基法19条1項により、自然退職扱いは無効であるから、原告は雇用契約上の地位を有し、かつ、民法536条2項によって現在まで月例賃金額である329,000円を毎月支払うべきである。

・安全配慮義務違反により原告が被った精神的損害に対する慰謝料は50万円が相当であるが、素因減殺で2割減の約40万円とする。

・他方、原告の病気は2019年6月に寛解して休職事由が消滅したとして短時間勤務での復職を申し出たことについては、原告の症状は就労に耐えうるほど寛解したとはいえないとして原告の請求を認めなかった。


4、本判決は、75頁にわたる詳細なものであり、事実関係を証拠に基づいて詳細に認定しており、それに基づく判断は基本的に正当といえる。

 パワーハラスメントの定義から説き起こして認定した事実を丁寧にあてはめていく手法を取ったこと、TCL社には、「使用者は労働者に対し、良好な職場環境を保持するため、職務上の地位、人間関係等の職場内の優位性を背景として、業務の適正な範囲を超えて、精神的、身体的苦痛を与える行為又は職場環境を悪化させる行為を防止するという安全配慮義務」があり、TCL社が上司に対する指導をしなかったこと等の行為について、この義務に違反すると認定したことは、パワーハラスメントに関する現在の考え方に則り、これを推し進めるものであって正当である。

 即ち、事業主に対してパワハラ防止措置を義務付けた改正労働施策総合推進法が2020年6月1日に施行(中小企業については2022年4月1日に施行)され、これを受けて精神障害の労災認定基準の心理的負荷評価表に「パワーハラスメント」の項目が追加された。国をあげてパワーハラスメント対策が目指されるなかで、ハラスメントの存否を丁寧に認定し、その存在を主たる理由として業務上認定をしたことは、昨今のハラスメント根絶の取組みの潮流に合致するものであり、類似の事例で悩む全国の労働者を励まし、また企業に利益追及のあまりハラスメント対策を怠ることに警鐘を鳴らすものであり、今後のハラスメント根絶に向けた運動に対して大きな影響を与えるものである。

 原告の請求内容に認められなかった点が一部あることは残念であるが、基本的に本判決は上記の観点から高く評価できる。


5,首都圏青年ユニオン及び同顧問弁護団は、東京地裁による本判決を歓迎するとともに、TCL社に対し、本判決を真摯に受け止め、原告に対する関係でパワーハラスメントがあったこと、原告の職を奪ったことの違法性を認めこれに誠実に反省する態度を表明すること、控訴することを断念し、直ちに本判決に従った形で原告及び首都圏青年ユニオンとの間で全面的な解決を図ることを求める次第である。

                                 

当事者コメント


3年以上に渡る訴訟に、組合と共に闘い、このように勝つことができ、本当に嬉しく思います。

まだまだパワハラが横行している会社があるようですが、そのような野蛮な行為は直ちにやめ、心理的安全性を確保することが会社の利益に繋がることをどうかどうか、学んでください。

長期に渡る戦いに最後まで応援、帆走くださり、本当にありがとうございました。


以 上

 

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