ヤマト運輸株式会社、自身のセクハラ被害を訴えた女性パート社員を雇い止め

 

 運輸業界最大手の株式会社ヤマト運輸(以下ヤマト運輸)は、青年ユニオンに加入して自身のセクハラとパワハラの被害を訴えた自社の女性パート社員を、厄介者払いのように一方的に雇い止めにしました。非正規労働者は、セクハラやパワハラをされても我慢しろというのでしょうか?首都圏青年ユニオンは、ヤマト運輸の対応に強く抗議し、雇い止めの撤回を求めます。



◆日常的なセクハラとパワハラ

 深夜、お客さんに届ける荷物が集まる倉庫で、トラックから荷物を下ろし、行き先別に荷物を整理し、そしてトラックに荷物を積んでいく、これが当事者である女性パート社員Aさんの主な仕事でした。派遣→アルバイト→パート社員とステップアップしていったAさん。パート社員になったとたんに日常的なパワハラとセクハラにさらされることになります。

 パート社員はAさん含め全部で3人。Aさん以外のパート社員BさんとCさんはどちらも男性で、Aさんよりもずっと勤続年数の長いパート社員でした。このうちBさんから執拗にセクハラ発言を受けることになります。

 例えば事務所でBさんとAさんが2人きりで作業をしていたとき、そこにCさんが入ってくると、「Aさんと子ども作っちゃうところだったよ」とBさんは笑いながらCさんに言います。また、Aさんに向けて「もうすぐ射精しそうだよ」「白いの(精液)が出る」などといった発言をするといったセクハラが、日常的に繰り返されていました。Cさんも隣で笑っているばかりでした。

 加えて、理不尽に怒鳴られる、挨拶を無視されるなどといったパワハラもBさんとCさん双方から日常的に受けていました。

Aさんはこうしたハラスメントについて、そこに配属されている正社員であり上司であるDさんに相談します。しかしDさんは、「無視すればいいんじゃない」などと何の対応もしませんでした。

 ついに耐えられなくなったAさんは、青年ユニオンに相談をし、ユニオンに加入してハラスメントと闘う決意をします。


◆第1回目の団体交渉――セクハラを認めながら雇い止め

 首都圏青年ユニオンは「労働組合」ですが、労働組合には「団体交渉権」が憲法で保証されており、会社・ユニオン・当事者との間で話し合いである「団体交渉」を開催する権利を持ちます。会社はユニオンからの「団体交渉」の申し入れを基本的に断ることが出来ません。青年ユニオンはこれまで、ヤマト運輸と2回の団体交渉を行ってきました。

 第1回目の団体交渉で、ヤマト運輸はセクハラが日常的に行われていたことを明確に認めました。そして、上司であるDさんが被害者女性であるAさんからハラスメントの相談を受けたとき「無視すればいいんじゃない?」などと言ったことを認めました。

 しかし、ヤマト運輸は「上司のDさんの対応に問題はなかった」との見解を示します。ユニオンは、そのような見解は受け入れられないと強く主張しましたが、ヤマト運輸は頑なに「Dさんは悪くない」と言い続けます。

 さらに、団体交渉の最後に「Aさんは雇い止めするつもりです」と突然言い出しました。ユニオンは、ユニオンに加入しハラスメントを告発したことを理由とした雇い止めであり、撤回するよう強く求めましたが、会社は「今回の団体交渉と雇い止めは別問題」「期間満了なので雇い止めします」と繰り返すばかり。そして、団体交渉の次の日に雇い止めの通知をAさんの自宅に送りつけたのです。

 実は、ヤマト運輸では、8時間以上の労働がなされているにもかかわらず人手不足で休憩が取れていませんでした。これについてはヤマト運輸も認めており、「今後人員補充をしていくつもりだ」と発言しました。しかし、ではなぜAさんを雇い止めにするのでしょうか。不可解です。到底「団体交渉と雇止めは別問題」とは考えられません。明らかに厄介者払の、ハラスメントの告発を理由とした雇止めです。

 上司は部下のハラスメントの相談に対応せずともよく、ユニオンを通じて告発すれば雇い止めされる。非正規労働者は、ハラスメントを受けても黙って我慢しろということなのでしょうか?

◆第2回目の団体交渉――雇止めの「理由」のこじつけ

 第2回目の団体交渉では、ヤマト運輸は、新しく雇止めの理由を提出してきました。それは、Aさんの業務方法の「まずさ」や、業務中のミス、そして、それらを何度も指摘されても直さなかったことなどです。

しかし、後出しのこうした事実を雇止めの理由として認めることは出来ません。また、Aさんからすれば、例えば「まずい」とされている業務方法はAさん以外の人も当たり前に行っていたものですし、「何度も指摘された」という事実はありませんでした。こうした事実認識の齟齬を団体交渉では指摘しましたが、会社は雇止めを撤回・再検討しようとはせず、頑なに雇止めを主張し続けます。

 一方で、ハラスメント加害者の処遇については、本人の言い分も聞いたうえで処分が検討されてきています。Aさんが本人の主張が聞き入れられずに一方的に雇い止めされているのに対して、ハラスメント加害者はより適正な扱いを受けているのです。

ハラスメントは非常に重大な権利侵害です。率直に言って、会社が言っているAさんの「まずさ」が仮に全て本当だったとしても、ハラスメントよりも重い処罰がされるべきものだとは到底考えられません。しかも、ハラスメントの事実は加害者・被害者双方に認められているのに対して、ヤマト運輸が主張するAさんの業務上の問題については、Aさんとヤマト運輸双方の事実認識に大きな齟齬があります。

なぜ、Aさんの処遇が、Aさんの言い分も聞き入れられずに一方的に決められてしまうのでしょうか?なぜ、ハラスメント加害者以上に厳しい取り扱いである、一方的な雇止めがAさんになされるのでしょうか?

ヤマト運輸の対応や主張は、矛盾だらけです。重ねていいますが、ユニオンを通じてハラスメントを告発したAさんを厄介者扱いした雇止めとしか考えられません。そして、そのようなことがまかり通れば、非正規労働者はハラスメント被害に対してますます声を上げられなくなっていきます。

◆セクハラ・パワハラの対抗手段としてのユニオンを

 こうしたセクハラ発言やパワハラはヤマト運輸だけに限った問題ではありません。青年ユニオンにはこうしたハラスメントの相談が多々寄せられておりますが、metoo運動の影響なのか、最近得にセクハラの相談が多くなっています。相談では、ハラスメントの告発をしたにもかかわらず適切に扱ってもらえず、何の対応もしてくれなかった、といったものや、むしろ告発をした被害者の側が不利益を受けるといったものも多いです。そんなとき、労働組合を使うというのは1つの有効な手段ではないでしょうか?

 労働組合には非常に強い権力が与えられています。団体交渉権もそうですし、加えて労働組合員であることを理由に不利益な扱いをすることは「不当労働行為」として禁じられています。また、ハラスメントの調査の仕方や賠償、あるいは加害者への処罰の仕方など、広範な点を団体交渉で扱うことが可能ですので、会社の対応に強いチェックをかけることができます。

ハラスメントは人間の尊厳を傷つけ、後遺症を残すなど、その人の一生を左右しかねない深刻な問題です。青年ユニオンはハラスメントをなくすため、引き続き闘っていきますので、ぜひ、ハラスメントでお悩みの労働者は、青年ユニオンにご相談ください。

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